■Ethernetの種類

では、ここからは実際にどのようなものを使ってネットワークをつなぐのかをお話したいと思います。

●Ethernet (イーサネット)
LANで最も普及しているのがEthernetで、その規格はIEEE802.3によって標準化されています。まず、IEEEですが、これはInstitute of Electrical and Electronic Engineers(米国の電気電子学会) のことで、その802.3標準化委員会がEthernetの標準化を行っています。Ethernetでは、10Mbps(bits per second)の伝送量を持ち、ケーブルの種類によっていくつかの接続方法がありますが、小規模なLANで最も多く用いられてきたのが、10BASE-Tです。
ちなみに、伝送量が10Mbpsということは、1秒間に10,000,000ビット送ることができるということです。ビットとは、簡単に説明すると0と1を表す電気信号のことで、この電気信号ひとつの事を1ビットと呼びます。このビットを単位時間あたりにどのくらい送ることができるかがLANの伝送量の単位bps(1秒間に送ることができるビット数)となっています。また、パソコンなどでファイルの単位として使われているバイトですが、これは原則的に8ビットを1バイトと換算した単位です。
Ethernetの種類については、実際には下記以外にもたくさんの種類があります。もし興味がありましたが、調べてみてくださいね。

10BASE-T (テンベースティー)
ハブ(HUB)と呼ばれる集線装置を中心に、ツイストペアケーブルと呼ばれる電線で、ハブとLANアダプタ間を接続し、通信を行います。ハブとLANアダプタ間は100mまで接続でき、さらにハブとハブをカスケード接続と呼ばれる数珠繋ぎ方式で4台(実は、この表現は正しくありませんが)まで接続できますので、最大延長500m程度まで伸ばすことができます。現在もっとも普及している10BASE-Tですが、より伝送量の多い100BASE-TXへの移行が進んでいます。

10BASE2 (テンベースツー)
LANアダプタとテレビのアンテナ線などに見られる5mm程の太さの同軸ケーブルをT型コネクタで接続するネットワークです。かつてハブが高価だったころ、小規模事業所などで良く用いられていました。ケーブルの両端には終端抵抗(ターミネータ)を取り付けますが、その間をセグメントと呼び、その最大延長は185mです。10BASE-T関連製品の低価格化と手軽さに押されて、あまり見かけなくなりました。

10BASE5 (テンベースファイブ)
10mmほどの太さの同軸ケーブル(当初黄色のケーブルが用いられていましたので、イエローケーブルと形容されます)にトランシーバと呼ばれる装置を取り付け、そこからAUIケーブルでLANアダプタに接続します。セグメント間の距離が500mと比較的長いのが特徴となっています。普通、設置は専門業者に依頼しますので、コスト的に割高となってしまいます。

●Fast Ethernet (ファストイーサネット)
Ethernetの10Mbpsに対し、その伝送量を10倍の100MbpsにしたものがFast Ethernetで、その規格はIEEE802.3uによって標準化されています。

100BASE-TX (ヒャクベースティーエックス)
10BASE-Tと同様、ハブを中心にツイストペアケーブルで接続するタイプです。近年、機器の低価格化と10BASE-Tとの互換性から、10BASE-Tから100BASE-TXへの移行が盛んになっています。また、新規に導入される場合、コストパフォーマンスの面から考えても、ほとんどの場合、始めから100BASE-TXが導入されています。

●Gigabit Ethernet (ギガビットイーサネット)
Fast Ethernetの伝送量をさらに10倍にしたものがGigabit Ethernetです。まだ関連機器の値段も高く仕様も定まっていないので、小規模LANでは一般的ではありません。

1000BASE-T (センベースティー/ギガベースティーなど)
10BASE-Tや100BASE-TXと同様に、ハブを中心にツイストペアケーブルで接続するタイプで、IEEE802.3abとして標準化されています。

●Wireless LAN (ワイアレスラン・無線ラン)
比較的新しいLAN用規格で、IEEE802.11/IEEE802.11bによって標準化されているネットワークです。Wirelessの名があらわしているように、赤外線や電波などを使い無線で通信を行いますので、有線LANに比べてフロアレイアウトの自由度が高く、配線が無いため見た目もすっきりとしている、さらに屋外アンテナを用いることによりビル間通信などの長距離で配線不可能な場所への応用も可能であるなどのメリットがあります。家庭などのケーブル配線が気になるような環境や、アパートやマンションなど壁に穴をあけられないような事情のある環境などでの使用にも適しており、伝送速度が11Mbpsと10BASE-Tと同等の伝送速度を持ったIEEE802.11bの標準化の完了と機器の低価格化により、急速に普及し始めています。
接続には、無線LAN用のLANアダプタをパソコンに取り付け、アクセスポイントと呼ばれる中継装置で通信を受け取りネットワークを実現します。また、10BASE-Tポートなどの有線LANとのインターフェースを持つものでは、その他の有線LAN機器との接続も可能となり、幅広い応用方法が提供されます。

■Ethernetの接続形態

Ethernetには、いくつかの接続形態がありますが、これを専門用語でトポロジーと呼びます。

●バス型
10BASE2/5で見られる一本の同軸ケーブルに各LANアダプタをぶら下げるような接続形態をバス型トポロジーと呼びます。バス型トポロジーでは、1本のケーブルに、各々のパソコンを数珠繋ぎにするような形態を取りますので、特に10BASE2では、1箇所トラブルが発生すると、ネットワーク全体が停止してしまうなどの問題を併せ持っています。

●スター型
スター型は、10BASE-T/100BASE-TXに見られるハブを中心とした接続形態です。比較的障害に強い接続形態とされています。例えば、1箇所トラブルが発生しても、トラブルの発生したLANアダプタなどの機器を外すだけで対応が可能となります。ただし、ハブ自体がトラブルを起こした場合は、同じハブにつながった全体に影響が出る可能性があります。

■LAN構築に必要な機器

ここでは、10BASE-T/100BASE-TXによるLANを例にとって簡単に説明します。

●LAN アダプタ
LANアダプタは、パソコンをネットワークに接続するための装置です。最近では、パソコンに標準搭載されて販売されることも多くなってきました。
それぞれ、10BASE-T/100BASE-TX用や、10BASE2用、10BASE5用など、種類ごとに販売されていますので、間違えないように気をつけましょう。また、基本的に、パソコンに用意されている拡張バスに接続して使いますが、もっとも普及しているのはPCIバスと呼ばれる拡張バス用のものです。そのほかには、ノート型パソコンに見られるPCカードタイプのものや、少し古いIBM PC/AT互換機ではISAバス、PC-9800シリーズでは98汎用バス(Cバス)等も有ります。PCIタイプのものでは、ハーフサイズとフルサイズのものがあり、ハーフサイズはフルサイズのおよそ半分くらいの長さです。現在は、ハーフサイズの製品が多く見られますが、省スペースデスクトップなどハーフサイズしか搭載できないようなパソコンの場合、注意が必要です。最近の低価格省スペース型デスクトップなどでは、拡張スロットの無いものなども有り、その場合はUSBポートを利用した、USB LAN アダプタを用います。

●ツイストペアケーブル
ツイストペアケーブルには、電話機に接続されているケーブルと良く似たUTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルを用いますが、通常、両端にRJ-45モジュラープラグのついたカテゴリー5と書かれているケーブルを使います。10BASE-Tの場合は、カテゴリー3でも問題ありませんが、それほど大きな価格差もありませんので、100BASE-TXへの移行も考慮すれば、最初からカテゴリー5を購入しておくのがベストでしょう。また、ストレートタイプとクロスタイプのものがありますので注意が必要です。通常LANアダプタとハブの接続にはストレートケーブルを用います。クロスケーブルは、ハブを介さずLAN アダプタ同士で接続する場合や、カスケード接続用のポートがないハブ同士をカスケード接続するときなどに利用されます。

●ハブ(HUB)
ハブは、10BASE-Tや100BASE-TXのケーブルを差し込むコネクタ(ポート)が複数搭載されていて、差し込まれたケーブル間でネットワークを形成する装置です。4ポートや8ポートなど、ポート数によっていくつかの種類がありますが、設置しようとする台数より多めのポートを持っているものが望ましいです。後からパソコンを増設するときに、あわててハブを買う必要が無いように、ある程度余裕を持っておきましょう。ただし、前述の通りカスケード接続により後からハブを追加し、ポート数を増やすことも可能ですので、あまり多すぎるのも考え物ですから、予算や設置場所、必要なポート数などを考慮して選択するようにしましょう。また、100BASE-TX用、10BASE-T用または10BASE-T/100BASE-TX両用のものなどがあります。必要により適宜選択しましょう。

また、ハブと良く似たものにスイッチングハブまたは単にスイッチと呼ばれる装置があります。通常のハブ(リピータハブ)では、流れてきた通信を全てのポートに対して流し、通信を受け取ったネットワーク機器が自分のものであると判断して反応するようになっています。したがって、宛先以外のネットワーク機器では、単に通信を破棄するだけとなり無駄な通信が多くなります。それに対しスイッチングハブでは、あらかじめ各ポートに接続されているネットワーク機器が記憶されており、通信が入ってきたときに宛先を読み取り、宛先のネットワーク機器がつながっているポートだけに通信を流すようになります。平たく言えば、電話と電話をつなぐ電話局の交換機みたいなものですね(え?ますますわかりませんか?)。その他のポートに無駄な通信が流れないため、通信負荷の低減が図れます。最近では、このスイッチングハブも価格の低下が著しく、ご家庭での使用に満足のいく価格帯となってきています。リピータハブが極端な低価格で提供されているため目立ちませんが、コストパフォーマンスを考慮すると、スイッチングハブに軍配が上がります。